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甲斐駒ヶ岳・駒津峰稜線場で4人パーティのSLが前方に転倒。通りすがりの看護師たちの応急手当を受け自力下山。山小屋で救助要請し、ヘリ搬送。

2018年2月26日

 

発生日2015年07月25日
体験者名2017年Y057
登山地域甲斐駒ヶ岳

 

 

登山概要

■パーティ人数:3~5人以上人
■山行スタイル:山岳会やサークル
■宿泊:テント泊
■登山内容:山頂往復
■天気:快晴

 

ヒヤリハットタイプ

■解決種別:その他
■登山計画時にそのリスクに対する検討を行ったか:した
■行動中にリスク回避や軽減が行えたか:しなかった

 

ヒヤリハット本文

2年前入会した山岳会の個人山行に初参加の出来事。リーダーは槍ヶ岳登り隊の模倣で慣らし山行を企画。事故の起きた山行は金曜日前夜泊の長衛小屋ベースのテント泊で甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳を登山する計画だった。散々単独行をやって、次は雪山を学びたいと入会し、3か月目。例会で簡単な打ち合わせをし、当日Lの運転する車で自己紹介。翌朝一番のバスを利用し、長衛小屋にテントを張り、甲斐駒ヶ岳へ登頂準備。足早にSL先頭で登頂するもLが仙水小屋で大汗を掻く。相当バテテいる様子。一人50代の女性が膝に不安を抱えていると申告するも、全体の様子を気にする訳でもなく先行。往路は花崗岩の照り返しがきつい中、リーダーが少し離れながらも最終的には頂上で全員が合流。休憩後、お昼前に下山開始。六方石で下山者の渋滞の列が発生。突然Lが追い越し、パーティがバラバラに。Lの次にSL、膝の悪いメンバーと私が2人して歩く。駒津峰へ上がる手前の細い稜線で悲鳴が聞こえる。「助けてくださ~い。私は〇〇山岳会の××」と耳に入って慌てて先を急ぐと1メートルはない稜線場の窪みにSLが転倒していた。先行していたLが慌てて駒津峰の岩場を降りてくるのが見えた。取り乱したLは自分の携帯で山岳会、警察に電話するも普通。ドコモを持参したメンバーの携帯がやっとつながる。警察は「自力下山が望ましい」と回答。リーダーは警察の助言を受け4人での下山を決意。通りがかりの看護師たちの集団に傷の手当や脈を図って頂く。怪我をしたことのないSLは気を張っていたが出血の影響か、興奮して言動がおかしかったように思う。内容は「会社に迷惑かける」、と「山岳保険大して入っていないので、救助されたらいくら請求されるのか怖い。」(だから自力下山する)長衛小屋に夕暮れ前17:30に到着するも、出血量が多く長衛小屋に相談し、へり要請。1時間後、ヘリポートがなくテン場はヘリの起こす風と爆音に騒然。事故者はホバリングの中、吊り上げられ山梨市内の病院に搬送された。何故、駒津峰で救助を要請しなかったのか?1年後に怪我から回復したSLが駒津峰へ振り帰り山行をしたのは彼女にとって大きな一歩となったように思う。

 

要因分析

 

装備や外的要因の分析(3×3要因分析表)

 計画時出発直前行動中
装備計画時の装備には特に過不足なし。 Lが荷物をデポするのにツェルトをテン場に置き放し。 SLが怪我をした際、共同装備のツェルトがないので個人で持参した1人用ツェルトを日除けに使用した。
コース事前に誰がリーダーになっても困らないようにリサーチの宿題があった。実際に回答したのは私だけだった。計画どおりで実施。決めた筈のルート以外の選択を突然提案された。登頂時の直登ルートかう回路か?、遭難後、通らなかった双子山経由か仙水峠へ下山すべきか??
山の状況特に問題なし。夏の3000m峰なので早出早着を心掛けていた。 快晴。駒津峰までの標高では湿度は高く汗ばむ状況だった。終始、快晴。花崗岩で照り返しがきつく、他の登山者にもバテテている人が見られた。

 

登山者自身の内的要因分析(技術、知識、体力、経験等)3×5登山者分析表

 計画時出発直前行動中
楽観的・希望的な解釈 同じ山岳会ではあるが8月に槍ヶ岳に登頂したいというだけで個人山行は初対面同士の寄せ集めだった。この時の山行募集は山行経験の制限があり、新人の私はLのヒアリング後、参加許可を頂いた。は準備体操をし、バイタルチェックをする。自己申告でメンバーが膝の不安を伝える。SLは帽子・ヘアバンド忘れ。睡眠不足を申告。Lは最初はSLが先頭で。途中、先頭は自分に変わることを予告。 Lは大汗をかき、出遅れて明らかに体力面で劣っていた。また、バイタルチェックをした内容が徹底されず、声掛けもせず自分だけさっさと下山するなど不可解な行動をとった。
調査・観測結果に基づくリスク対策行動
安全最重視の行動
リスク低減行動の継続的実践
その他L

 

対策

本件はヒューマンエラーによる遭難事故。好天下のお友達山行ばかりだと、リスクヘッジができない。山に関する勉強はしない、楽しければそれでよい。何も身につかない。ただ『山岳会の会員』という事に満足している人がいたという事実。雪山でもハイキングでも山は等しく危険なスポーツ。積極的に県連の遭難防止交流会や雪崩事故防止講習会に参加し、技術の向上や思考する習慣を重ねている。